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環境現象 / Environmental Phenomena

2020

作品は、作品だけで存在できず、環境が現象を生み、その現象が作品を創る。


石ころや、これまで人間がつくってきたものは物体であり、物体はそれ自体で安定的な構造をもつ。石ころは、外界から遮断され密封された箱に入れても存在し続ける。

一方、海に生まれる渦は、閉じた箱に移すと一瞬で消えてしまう。つまり、渦は、それ自体で安定した自らの構造を保っていない。渦は、環境が生む流れの中にある存在であり、渦の外部から内部へ、そして内部から外部へと流れ続ける水によってつくられ、流れとともに変化する。そして、その存在の輪郭は曖昧で、渦と渦の外側の物質的な違いはない。


物体ではなく、特別な環境を創り、環境が生んだ現象によって作品を創る。それらを”環境現象”と呼ぼう。作品は、環境とは切り離せず、環境変化とともに変化する。そして、これまで人間がつくってきたものの常識を超越し、人が作品の中に身体ごと入り込んでも作品の存在は維持され、作品は壊れても修復される。逆に、環境が維持されない時、作品はなくなってしまう。作品の存在の輪郭は曖昧で、環境と連続的である。人々の意識は作品そのものから環境にまで広がっていくだろう。

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